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2009年7月25日土曜日

千日紅


「お父さんはどういう生き方が好き?」
「ララちゃん、それはまた随分ストレートな質問だね!好きも嫌いも、もう人生の半分以上過ぎているから今更どうしようもないさ。だけど、「雨ニモマケズ」という詩に表現されているような生き方はいいね。この歳になるとしみじみとわかるよ」
「ああ、あの宮沢賢治の詩ね。後半の
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニワタシハナリタイ というところあたりかな」
「そうそう。彼自身も理想として出来なかった生き方かも知れないね。死ぬ直前に枕元にあった手帳に走り書きしたらしい」

・「咲くものの 赤きが多し ひでり雲」(小沢 満佐子)

EOS40D, Sigma 105mm/F2.8 macro

2009年7月19日日曜日

はぐれ鳥



「ララ、お父さんの職場の隣に洞峰公園 http://www.dohopark.net/ があって、夕方散歩に行ったら、あひると鴨が一緒に遊んでいたよ」
「鴨は渡り鳥で冬の季語になっているくらいだから、今は北に帰っている時期じゃないの?」
「これだけが帰りそびれたのかもね」
「そういうのを、はぐれ鳥というのかしら」
「うむむ、人生はぐれ鳥とか、政界はぐれ鳥とか、はぐれ刑事とかいろいろあるね」

・「帰る場所 求めて彷徨う はぐれ鳥」(詠み人知らず)

EOD40D, Canon 24mm/F2.8 wide

2009年7月18日土曜日

さるすべり


「お父さん、「猿も木から滑る」という諺があったっけ?」
「ララ、それはね「猿も木から落ちる」だよ。得意なことで失敗することさ」
「例えば、今の政治のゴタゴタのもとになっている総理大臣のこと?」
「それは違うね。もともと総理大臣の責務を全うする能力の無い人をその席につけて陰で操ろうとした人達がいたけれども、筋書き通りに踊れなくて破綻したのだ。自民党の混乱ぶりは目も当てられないね」
「それじゃ、せっかく木に登らせてもらったのに滑り落ちるんだから「猿も木から滑る」という諺もありじゃないの」
「そうか、それで本日のお題の「さるすべり」につながるんだ!ララもやるね」

・「炎天の 地上花あり 百日紅」(高浜 虚子)

EOS40D, Sigma 105mm/F2.8 macro

2009年7月11日土曜日

のうぜんかづら



「お父さん、のうぜんかづらの赤い花が咲き始めたね」
「いつも梅雨の終わりころになると咲きだすんだ。今年も暑い夏の予感がするな」
「あの花の朱色とだいだいの混じった色は女の情念が宿っているみたい」
「おや、ララにもそういう言葉がわかるの?」

・「返事来ず のうぜん落花 地を焦がし」(佐々木 玲子)

「私は生まれてから10年目になるけど、犬の年齢にすれば熟女ですもの。そういう想いの一つや二つ、ヴフフ---」

EOS40D, Sigma 105mm/F2.8 macro & Canon 24mm/F2.8 wide

立ち葵



「徳川家の紋どころの葵が咲き始めたよ」
「平安時代には唐葵と言ったから、中国から渡ってきたのかね。京都の賀茂神社の夏祭りでは葵を飾りに用いるので、葵祭りとも言うそうだよ。ララは葵祭を見たことが無いかもね」

・「うちゑみて 葵祭りの 老勅使」(阿波野 青畝)

「勅使ってなに?」
「お父さんもよくは知らないけど、天皇がお寺や神社に参詣できない場合に使者として赴く人のことを言うみたいだ。今はそういう古い言い方は聞かないけど」

EOS40D, Sigma 105mm/F2.8 macro

2009年7月5日日曜日

グラジオラスの花


「お父さん、雨が上がったみたいだから散歩に行こうよ」
「今日は田舎道を歩こうか」
「あそこに鋭い葉っぱにきれいなフリルのついた花が咲いているよ」
「あれはグラジオラスで、葉の形がフェシングの剣に似ているので英語ではSWORD LILY(剣の百合)というそうだよ。「戦いの準備が出来た」の意味があるんだって」

・「はっきりと 物言いたき日の グラジオラス」(安増 恵子)

「女の人が決意してそう言ったら、どっきりだね」

「お父さんはなんで週末にしか帰ってこないの?普段は何をしてるの?」
「ララちゃんのえさ代を稼ぐために働いているんだよ。一種の出稼ぎさ」
「どんな仕事をしているの?」
「一言で説明するのは難しいけど、ララにもわかるように「きちんとわかる計量標準」という易しい本
http://www.hakujitsusha.co.jp/hakujitsusha/978-4-89173-118-2.html
を同僚と共著で出したんだ。読んでみるかい」
「ララは字が読めないの」
「そういうけど実は読めるんだろ。だって「ここにおしっこするべからず」と書いてある立て札の所で、この間わざとおしっこしてたじゃないか」

EOS40D, Sigma 105 mm/F2.8 macro

2009年7月4日土曜日

あじさいの花



梅雨真っ盛りに咲く紫陽花は、咲き始めからだんだん花の色が変わるるので「移り気な花」と呼ばれます。江戸時代に日本に滞在したオランダ人医師シーボルトが好んだ花とか。

・「紫陽花の 路地伝い行く 迷い人」(小説家 森村 誠一)

EOS40D, Sigma105mm/F2.8macro

2009年7月3日金曜日

お寺の境内を散歩




「ララはね、お父さんが週末に戻ってきて一緒に散歩するのがとっても楽しみなんだ。今日はお寺の方に行ってみようよ」

「ここは歴史のある真言宗智山派の長久寺。三年前に立派に改築したけど、もとの古い建物の方が趣があったね。」
「あそこに、女の子を浮き彫りにした小さな石碑があるよ」
「左側にかすかに寛政二年一月十日と読めるから、もう200年以上も風雨にさらされているんだね。きっと、流行り病か何かで可愛い娘を亡くした親が建てたものだと思う。顔がとっても清らかで、本当に今でも親の悲しみが伝わってくるね」
「うーん、ララにも分かるよ。あれ、あっちに5人のお地蔵さんがいるよ」
「あれは、人の煩悩を和らげてくれるお地蔵さんだよ」
「煩悩って何?」
「ああしたい、こうしたいという願いが叶えられない苦しみ、とでも言ったらいいかな。ララちゃんだってお腹がすいてもずっとご飯が食べられないと大変だろ」
「それはそうだけど、なんで5人も居るのかしら?」
「ララちゃんと違って、人には人間関係や、仕事や、子供のこと、お金や老い先のことなど108も苦しみあるから、5人が分担して受け止めてなだめてくれるんじゃないのかな」

EOS40D, Canon Wide 24 mm/F2.8 & Standard zoom 17-85 mm/F4.0-5.6