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2012年11月22日木曜日

普遍性 Universality



「お父さん、電気標準の量子メトロロジー・トライアングル(Quantum metrology triangle)ってなあに?」
「ララちゃんもジョセフソン効果による電圧VJ はプランク定数hと電子の素電荷eと周波数f からなる (h/2e)f の関数で表わされ、量子ホール効果による抵抗RH は(h/e2)の関数で表わされ、単電子(Single electron tunneling)による電流I ef で表わされることを知っているだろう。それぞれは、基礎物理定数を基にした普遍性を持った量子力学的な電気の計量標準(Quantum metrology standard)になっているんだよ」

「そうなの。それで?」

「オームの法則(が成り立っているものとして)によって、これらを結びつけたものが量子メトロロジー・トライアングルと呼ばれている。これらの定数のうちで周波数は十分な精度(10-15乗程度)を実現出来ているので、このトライアングルによって三元連立方程式をたて、h e を2つの未知数とみなして解き、今の8桁程度よりも更に精度を高めようというのだ。
つまり、計量標準の技術を高めることにより今まで依って立つ基盤であった基礎物理定数の精度を高め、より高い普遍性を獲得しようということだ。
h e も基礎科学の多くの場面に出てくるから、これの精度を上げることで計量標準の精度を高め、かつ科学を進歩させることになる。PTB(ドイツ)、NIST(米国)、NPL(英国)、LNE(フランス)、NMIJ(日本)などの各国の国立計量標準研究機関が競っているんだよ」

「どこに乗り越えなければならない壁があるの?」

「ジョセフソン電圧効果による電圧と量子ホール効果による抵抗は十分なレベルで実現できているんだけれど、単電子による電流は現状ではpA程度しか実現できていなくて、それを9桁目あたりまでみると雑音が多くて不確かさが大きいので、これをmA程度まで引き上げられるかどうかが壁だ。研究者はあたかも荒野に獲物を狙う狩人みたいだね」

未知なるを 追いて弓射る 枯野かな (素粒子)

To track down scientist’s unknown prey, he draws his bow to its full extent in desolate field.

写真は、国立西洋美術館の入り口にある「弓射るヘラクレス」(エミール=アントワーヌ・ブールデル作)
5DIII, EF24-105mm/F4L IS USM

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