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2009年10月31日土曜日

山茶花


「さざんかさざんか咲いた道、焚き火だ焚き火だ落ち葉焚き---という童謡があったけど、今年も家の垣根の山茶花が咲き始めたね」
「うちのは早咲きだけど、これが咲くと間もなく木枯らしの季節になる」
「もう年賀状も売り始めたんだって?」
「そう、ララちゃんももう一つ歳をとることになる」
「うーん、嬉しいような、嬉しくないような複雑な気持ち」

・「山茶花の こぼれつぐなり 夜も見ゆ」(加藤 秋邨)

・「山茶花の 眠り見守る 夜半の月」(素粒子)

EOS40D, Sigma 105mm/F2.8 macro

ガマズミ


「鳥さんの好きそうな赤い木の実があるね」
「あれはガマズミと言うんだ。夏に白い花が咲き、秋が深まると赤い実をつけるんだよ」
「なんだかあか抜けない名前ね」
「そのかわり、花言葉は素敵で「愛は死よりも強し」と言うんだって。ララちゃん、この意味わかるかな?」

・「ガマズミの 紅を湛えて 誰ぞ待つ」(あかね)

EOS40D, Sigma 105mm/F2.8 macro

2009年10月25日日曜日

冬支度


「ウウ、煙が目にしみる」
「あれは脱穀し、玄米にしたあとのもみ殻を焼いているんだ」
「今年も豊作だったの?」
「夏らしい夏がなかったから、お米の出来も豊作という程でもないのかな。お米つくりはお天気次第だから苦労が多いんだよ。もみ殻焼きは晩秋の風物詩で、次は時雨の季節になり、もうすぐ冬がくる」

・「出来秋の もみ殻焼くや 冬支度」(素粒子)

・「秋半ば 我が人生の 今に似て」(同)

EOS40D, EF70-200mm/F4L USM

2009年10月24日土曜日

古民家


「今日は風土記の丘公園まで遠足だ!ララちゃん」
「ここには古墳が沢山あるんだね。随分古そうなお家もあるよ」
「古墳が沢山ある地域を公園にしたんだよ。これは明治時代の農家の茅葺きの家をここに移築したんだって。これを見るととてもなつかしくてじーんとなる」
「どうして?」
「だって、お父さんが生まれ、高校時代まで過ごした家とそっくりだからね。お父さんのところでは家の中で馬も飼っていたんだ。これを見ると子供の頃に家の周りで遊んだこと、いつも見ていた岩手山、姫神山や北上川も目に浮かんで来る」

やはらかに 柳あをめる 
    北上の 岸辺目に見ゆ
        泣けとごとくに (石川 啄木)

EOS40D, Canon EF 24mm/F2.8 wide zoom

2009年10月18日日曜日

すすき Withered silver grass


「すすきの穂が銀色に輝いて、わきにコスモスが咲いて、まさに秋の一幅の絵みたい」
「うん、小春日和といったところかな」
「でも、秋の日はつるべ落としで暮れるから寂しくなる」
「ララも寂しいか。日が暮れてすすきが風でたなびくとひとしおだね」

・「ゆく秋を 惜しむがごとく 銀すすき」(素粒子)

Withered silver grass swings as if it were regretted the passing autumn.

EOS40D, EF70-200mm/F4L USM

二十二夜供養塔


「この仏様、二十二夜供養塔とあるけど---」
「お父さんも詳しい事は分からないな。なんでも二十二夜目の月の出を拝んで女性特有の悩みを解消して頂こうと願う信仰らしい。だから、ララちゃんにもご利益があるかもしれないよ。よく拝んでおいたら」

・「石仏に 日の陰りゆく 秋の風」(ララのお父さん 改め 素粒子)

・「秋日差 石仏の背に しづかなり」(風音)

EOS40D, Canon EF70-200mm/F4L USM

2009年10月10日土曜日

野分


「今度の台風18号はすごかったね。久々の日本縦断だ」
「お父さんの近くでは竜巻が発生したんだって?」
「いや、びっくりだよ。幸い建物には被害はなかったけど、風がすごく渦巻いていたね」
「台風のことを野分と言うんだって?」
「昔はそう言ったみたい。大風が野の草を分けるって感じがでているよね。このあたりでも田んぼの稲が風の巻くままに倒れてしまって、取り入れ前のお百姓さんは大変だ」

・「野分過ぐ 刈り入れ前の 稲倒し」(ララのお父さん)

・「台風の 丹精の稲 なぎ倒し」(風音)

EOD40D, Canon EF70-200mm/F4L USM zoom

2009年10月4日日曜日

からす瓜


「藪の中にある赤い実はなあに?」
「あれはね、からす瓜」
「からすが食べるの?」
「さあ、どうかな。からすが食べているのを見たことがないね。誰に食べられることもなく、誰に顧みられることもなく、藪の中で毎年同じように花をつけ、実をつけ、朽ちていく」

・「誰知らず 過ぎゆく秋の からす瓜」(ララのお父さん)

EOD40D, CanonEF70-200mm/F4L USM zoom

2009年10月3日土曜日

中秋の名月


「今日は中秋の名月。お父さん、日本以外の国の人もこの風情がわかるのかしらね?」
「前にNIST(National Institute of Standard and Technology:USA)に行ってた時、お父さんと同じジョセフソン電圧標準を専門とする米国籍の中国人研究者と知り合って、夜メシを食べに街に出たんだ。ちょうど中秋の頃だった。問わず語りにノートに漢詩を書き出して彼が言うには、文化大革命を逃れて一人米国に渡ったけれども、月をみては李白の詩「静思夜」を口誦さみ、故国に残してきた家族を思いだしていたそうだよ。

牀前月光を看る
疑ふらくは是れ地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低れて故郷を思う

だから、国籍はどこであれ月を見て思いふけることはあるのではないかな。いや、人だけではなくて狼も満月に吠えるというし」

DOS40D, Canon 70-200mm/F4L USM zoom